自宅のオリジナルカービィ(以下オリカビ)についてまとめるブログです。落書き倉庫としても。
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絵筆を放り投げて部屋の隅で蹲っていると、お兄ちゃんがやってきて僕の頭を撫でた。
「泣かないで、ルドン」
お兄ちゃんはそうして僕のことを抱きしめて、でも僕と一緒にいるとお兄ちゃんまで叱られちゃうからと藻掻いた。
「いいの」
お兄ちゃんは小さく笑った。
「心配しないで」
彼はお月様のように金に光る瞳を優しく細めて、僕の額にキスを落とした。お兄ちゃんは僕とは違ってたのに。パパとママに期待されて、宗教画のように美しい絵を描いて、何でも出来るのに、愛されているのに、僕なんかに笑顔を見せてくれる。僕はどうしたらいいのか分からなくなって、また泣いた。
僕は歌手になりたかった。歌だけは誰にも負けないと思っていた。周りの子供達が僕を避けても、パパとママに無視されても、歌だけは僕を救ってくれた。そして僕の歌を聴いてくれるのは、お兄ちゃんだけだった。
「ルドンの歌、好きだよ」
僕の前でだけ見せてくれる笑顔。
「もっと聴かせて」
いつから僕は、あの笑顔を独占したいと思うようになってしまったのだろう。
お兄ちゃんの笑顔は僕だけのものだと思い込んでしまったのだろう。
「ホリィさんはね」
彼女の話をする時、微かに染まる兄の頬。
「すごく綺麗な女(ひと)なんだ」
愛おしそうに語るそのひとの名前。
(僕は、お兄ちゃんに笑っていて欲しかっただけだったのに)
僕は歌う。月のない夜、一人、風に乗せて。
(哀しくてならないよ)
歌声に併せるのは呪詛の音色。
( どうか 彼の想いが 届くことの ありませんように )
呪いを歌に込めて僕は祈る。嫉妬の炎に焦げる歌。
――きっと、僕の歌が裁かれたのは、犯してきた詐欺の罪ではなく、あの日唄った呪いのせいだ――。
声をなくした未来の僕が綴る戯言に、仙人掌の刺青を入れた友人は微かに苦笑し、掲げたカップをこつんと鳴らして乾杯をした。
「それでも唄う、お前が好きだよ」
彼は僕のギターを指差して言った。
【以下、上記SSを書いた際のツイッターのメモ】
「泣かないで、ルドン」
お兄ちゃんはそうして僕のことを抱きしめて、でも僕と一緒にいるとお兄ちゃんまで叱られちゃうからと藻掻いた。
「いいの」
お兄ちゃんは小さく笑った。
「心配しないで」
彼はお月様のように金に光る瞳を優しく細めて、僕の額にキスを落とした。お兄ちゃんは僕とは違ってたのに。パパとママに期待されて、宗教画のように美しい絵を描いて、何でも出来るのに、愛されているのに、僕なんかに笑顔を見せてくれる。僕はどうしたらいいのか分からなくなって、また泣いた。
僕は歌手になりたかった。歌だけは誰にも負けないと思っていた。周りの子供達が僕を避けても、パパとママに無視されても、歌だけは僕を救ってくれた。そして僕の歌を聴いてくれるのは、お兄ちゃんだけだった。
「ルドンの歌、好きだよ」
僕の前でだけ見せてくれる笑顔。
「もっと聴かせて」
いつから僕は、あの笑顔を独占したいと思うようになってしまったのだろう。
お兄ちゃんの笑顔は僕だけのものだと思い込んでしまったのだろう。
「ホリィさんはね」
彼女の話をする時、微かに染まる兄の頬。
「すごく綺麗な女(ひと)なんだ」
愛おしそうに語るそのひとの名前。
(僕は、お兄ちゃんに笑っていて欲しかっただけだったのに)
僕は歌う。月のない夜、一人、風に乗せて。
(哀しくてならないよ)
歌声に併せるのは呪詛の音色。
( どうか 彼の想いが 届くことの ありませんように )
呪いを歌に込めて僕は祈る。嫉妬の炎に焦げる歌。
――きっと、僕の歌が裁かれたのは、犯してきた詐欺の罪ではなく、あの日唄った呪いのせいだ――。
声をなくした未来の僕が綴る戯言に、仙人掌の刺青を入れた友人は微かに苦笑し、掲げたカップをこつんと鳴らして乾杯をした。
「それでも唄う、お前が好きだよ」
彼は僕のギターを指差して言った。
【以下、上記SSを書いた際のツイッターのメモ】
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「私の命を、半分あげる」
灼け爛れた僕の頬を両手に包んで、姉さんは言った。
「そうすれば、陽燈は死なない」
「――でも、姉さん」
彼女の手のひらは温かで優しくて、しかしそんな優しささえも爛れた皮膚には痛すぎて、熱くて、この苦痛を背負って生きるぐらいならいっそ安らかに死んでしまいたかった。
「僕はもう逝くよ……姉さん、だから姉さんだけでも……」
――幸せになって欲しかった。
彼女はクスリと笑う。
「じゃあ、これは私のわがままね……」
彼女の頭部に生えた長い翼が、俺の体を包み込んだ。
中空から白い雪が降る。
意識が消えかけた僕の体に静かに降り積もる。
「生きて、私の弟」
これまでにない寂しそうな声が聞こえた。
「生きて……」
三日月に照らされながら、白い雪に埋もれていった。
・陽燈(後のカクタスファイア)と雪月花は、変則的な角族の姉弟。母は羽族の女性「ホリィ」、父は角族の男性「ファゴット」。
・ファゴットは、長寿命と高い魔力を持つ角族だったが、その力を己の欲望の為に乱用していた。
彼の魔力は、「人体改造」。対象の人物と長く接することで、その相手の肉体を変質することができる。
その力によって、本来角族同士の交配でしか生まれない筈の子供を、多くの女性の体を改造して生ませてきた。大半は奇形児であったが、ごく稀に非常に美しい子供が生まれることがあった。
彼のお眼鏡に適った「子供」が、ホリィとの間に生まれた長女「雪月花」であった。
・実験の成功と、また何よりホリィを深く愛していたファゴットは、娘と妻と共に幸せな二年を過ごす。しかし、その後生まれたもう一人の子供は、腕が角になっているという完全な奇形児で、ファゴットの怒りを買った。またホリィも息子の出産に際して胎内を傷つけ、重傷を負う。ファゴットは息子を殺害しようとしたが、それをホリィが止めた。激怒したファゴットはホリィと息子(陽燈)を地下牢に閉じ込めてしまう。
・まだ幼い雪月花は、母と弟の失踪について殆ど何も知らされることなく成長し、父のみを信じて生きてきた。しかし彼女が10歳の時分、地下牢から逃げ出してきた老いた母と遭遇し、彼女の手から弟の救出を託される。しかしそれをファゴットは見ていて、家に火を付けた。
・ホリィは死に、雪月花と陽燈も炎に追われながら家を出た。ファゴットが追うが、雪月花は父譲りの魔力でそれを撃退する。逃げる二人だったが、8年に渡る虐待と光さえ見ずに過ごしてきた陽燈は炎に眼を焼き、一切の生きる希望を失っていた。
死にかけた陽燈を救うため、雪月花は自身の生命エネルギー(寿命)を陽燈に分け与えた。その際、陽燈の傷ついた角も彼の回復の為に吸収され、腕は普通の人間と同じものになる。また、光射さない人生を過ごしてきた彼に新たな生を与えるため、彼の記憶に蓋をした。
雪月花はこのエネルギーの受け渡しにより、思考能力の一部を失い、結果ふわふわとした言動が目立つようになる。だが記憶や感情は失っていない。
・「おはよう、陽燈」「……あんたは、……誰、…?」「わたし? ……ううん……なんだっけ…? ……わたしは雪月花、だよ」
・それからしばらく2人で暮らしていたが、成長した陽燈は姉を支えられるようになりたいと自立。「カクタスファイア」という通り名で流れの保安官になる。
姉はぼんやりしながらも、弟の旅が面白そうなのでのんびりフワフワ付いてきてしまった。
【余談で】
・陽燈(カクタスファイア)は「砂を物質に変える力と、人を大地に縛り付ける能力」を、雪月花は「雪を操る能力と、自由にものを浮遊させる能力」があります。両方、父譲りの強い魔力の発現によるものです。
・雪月花の頭の翼は、父の角の変質と母の翼が奇跡的に遺伝した結果。通常はカクタスファイアのように腕が角化など、奇形化が多かったなか、非常に美しい遺伝をしました。その為にファゴットのお気に入りに……。
・角族は、基本的に角を折られない限り死にませんが、角を失うとほぼ例外無く死に、欠損などで大きなダメージを負います。カクタスファイアは角を失いましたが、彼は純角族ではなくハーフであったということ、また雪月花のエネルギー受け渡しによる補助などによって生き長らえました。雪月花は角にはダメージを受けていませんが、弟に多くの生命エネルギーを渡したので、二人の寿命は平均~平均ちょい以下くらいかと思います。姉の方が早めに寿命が来るかもしれません。
・ファゴットは今もどこかで生き長らえています。
灼け爛れた僕の頬を両手に包んで、姉さんは言った。
「そうすれば、陽燈は死なない」
「――でも、姉さん」
彼女の手のひらは温かで優しくて、しかしそんな優しささえも爛れた皮膚には痛すぎて、熱くて、この苦痛を背負って生きるぐらいならいっそ安らかに死んでしまいたかった。
「僕はもう逝くよ……姉さん、だから姉さんだけでも……」
――幸せになって欲しかった。
彼女はクスリと笑う。
「じゃあ、これは私のわがままね……」
彼女の頭部に生えた長い翼が、俺の体を包み込んだ。
中空から白い雪が降る。
意識が消えかけた僕の体に静かに降り積もる。
「生きて、私の弟」
これまでにない寂しそうな声が聞こえた。
「生きて……」
三日月に照らされながら、白い雪に埋もれていった。
・陽燈(後のカクタスファイア)と雪月花は、変則的な角族の姉弟。母は羽族の女性「ホリィ」、父は角族の男性「ファゴット」。
・ファゴットは、長寿命と高い魔力を持つ角族だったが、その力を己の欲望の為に乱用していた。
彼の魔力は、「人体改造」。対象の人物と長く接することで、その相手の肉体を変質することができる。
その力によって、本来角族同士の交配でしか生まれない筈の子供を、多くの女性の体を改造して生ませてきた。大半は奇形児であったが、ごく稀に非常に美しい子供が生まれることがあった。
彼のお眼鏡に適った「子供」が、ホリィとの間に生まれた長女「雪月花」であった。
・実験の成功と、また何よりホリィを深く愛していたファゴットは、娘と妻と共に幸せな二年を過ごす。しかし、その後生まれたもう一人の子供は、腕が角になっているという完全な奇形児で、ファゴットの怒りを買った。またホリィも息子の出産に際して胎内を傷つけ、重傷を負う。ファゴットは息子を殺害しようとしたが、それをホリィが止めた。激怒したファゴットはホリィと息子(陽燈)を地下牢に閉じ込めてしまう。
・まだ幼い雪月花は、母と弟の失踪について殆ど何も知らされることなく成長し、父のみを信じて生きてきた。しかし彼女が10歳の時分、地下牢から逃げ出してきた老いた母と遭遇し、彼女の手から弟の救出を託される。しかしそれをファゴットは見ていて、家に火を付けた。
・ホリィは死に、雪月花と陽燈も炎に追われながら家を出た。ファゴットが追うが、雪月花は父譲りの魔力でそれを撃退する。逃げる二人だったが、8年に渡る虐待と光さえ見ずに過ごしてきた陽燈は炎に眼を焼き、一切の生きる希望を失っていた。
死にかけた陽燈を救うため、雪月花は自身の生命エネルギー(寿命)を陽燈に分け与えた。その際、陽燈の傷ついた角も彼の回復の為に吸収され、腕は普通の人間と同じものになる。また、光射さない人生を過ごしてきた彼に新たな生を与えるため、彼の記憶に蓋をした。
雪月花はこのエネルギーの受け渡しにより、思考能力の一部を失い、結果ふわふわとした言動が目立つようになる。だが記憶や感情は失っていない。
・「おはよう、陽燈」「……あんたは、……誰、…?」「わたし? ……ううん……なんだっけ…? ……わたしは雪月花、だよ」
・それからしばらく2人で暮らしていたが、成長した陽燈は姉を支えられるようになりたいと自立。「カクタスファイア」という通り名で流れの保安官になる。
姉はぼんやりしながらも、弟の旅が面白そうなのでのんびりフワフワ付いてきてしまった。
【余談で】
・陽燈(カクタスファイア)は「砂を物質に変える力と、人を大地に縛り付ける能力」を、雪月花は「雪を操る能力と、自由にものを浮遊させる能力」があります。両方、父譲りの強い魔力の発現によるものです。
・雪月花の頭の翼は、父の角の変質と母の翼が奇跡的に遺伝した結果。通常はカクタスファイアのように腕が角化など、奇形化が多かったなか、非常に美しい遺伝をしました。その為にファゴットのお気に入りに……。
・角族は、基本的に角を折られない限り死にませんが、角を失うとほぼ例外無く死に、欠損などで大きなダメージを負います。カクタスファイアは角を失いましたが、彼は純角族ではなくハーフであったということ、また雪月花のエネルギー受け渡しによる補助などによって生き長らえました。雪月花は角にはダメージを受けていませんが、弟に多くの生命エネルギーを渡したので、二人の寿命は平均~平均ちょい以下くらいかと思います。姉の方が早めに寿命が来るかもしれません。
・ファゴットは今もどこかで生き長らえています。